今回のニュースより配信システムを変更しました。今後、過去の配信記事などアーカイブで確認できるようにしたり、ご興味を持っていただいているコンテンツの内容を分析したりしながら皆さまにとって、より価値を感じていただけるものとして参りたいと思います。今後もご期待くださいませ。
日本は2023年のドル建ての名目GDPで、ドイツに抜かれ4位に転落しました。また2026年にはインドに抜かれ5位に落ちることが予測されています。GDPは経済成長を示す指標の1つですから、データの裏付けのある疑いようのない事実として日本経済が他国に置いて行かれていることが認識させられます。このGDPはドル建てでみていることもあり、為替の影響も大きく数値に反映されるため円安に責任転嫁することもできますが、果たして本当にそれだけが原因であると結論付けて良いものかという疑問も浮かびます。そもそも人口が3分の2のドイツにGDPが抜かれるということは、圧倒的に1人あたりの生産性が低いことを表しており、日本はドイツの60%に満たない労働生産性でG7最下位のポジションが指定席になってしまっています。さらに、少子化の傾向は何十年と改善することなく、政治で議論されている異次元の少子化対策が機能するのかは不透明な状況です。有効な打ち手が無いまま、少子化が続いてきた結果、労働力不足は見ぬふりのできない社会課題となっています。2024年問題を迎える運送業だけでなく、その他の産業、もちろん製造業にとっても死活問題になりかねない状況になってきました。
冒頭から暗い話になってしまい申し訳ありません。ただ事実を直視したうえで、私たちが「何をすべきか」「何をしていくことができるか」を考えることが希望のある将来を作る1歩であるとの考えから、まずは私たちを取り巻く環境に関してあらためて確認をしました。
AutoFormを成形シミュレーションと定義すれば、(当たり前ですが)シミュレーションに過ぎませんが、もう少し上段から意味を定義してみると、皆さまの頭を悩ませている問題のお役に立てるところもあるかもしれません。日刊工業新聞社「プレス技術3月号」に弊社エンジニアの藤生がリソース不足を補うための活用のヒントとしてアイディアを寄稿しております。詳細は、雑誌をご覧いただければと思いますが、労働力不足の問題に対してAutoFormが貢献できる可能性を示しました。
ここで、あらためてお伝えしたいことは、AutoFormは皆さまの課題を一緒に考え解決していくことのできるパートナーとして成長して参りたいということでございます。手持ちの武器はAutoForm製品しかありませんので、プレス、BiWのシミュレーションが核になるのは事実であり、皆さまの業務全体からみれば限られた分野になることは間違いありません。それでも、まずは高く、広い視点での課題に関して皆さまと一緒に議論をさせていただきながら課題の特定、解決策の立案、そして実行を伴奏しながら確かな実益を得られるまで責任の持てる企業になっていきたいと思います。
自動化、AIの開発にも力を入れ始めております。シミュレーションをIoT、AIと組み合わせ量産工場の問題を事前に防ぐことを目的としたSmart Production Assistantを始め、開発初期のBiW設計に関わる、プレス部品の成形性、コスト把握、サプライヤーとのデータ共有も目指すCar Body Planner など試作段階ではあるものの徐々に形になって参りました。先に挙げた、労働力、リソース不足に対する課題に対してもAIを活用したソリューションの開発もスタートします。AIのような新しい技術は実際に試しながら創造を生み出し、使い方を形にしていくというステップが必要です。まずは皆さまの課題を高い視点で理解しながら、パイロット版を製作します。そして、実際に試行をしていただいたフィードバックをもとに活用方法を含めた製品の意味、価値の理解を増し、製品が生み出す価値とその製品精度を向上していく、そのような開発手法を取りながら課題解決に有効に機能する製品の開発を進めております。
今回のユーザー事例では、本田技研工業株式会社の川口様・島田様に、お2人が挑戦されてきた3年間を掘り下げていただきました。内容の詳細は記事をご覧いただければと思いますが、お話しいただいた内容を課題に対する挑戦という視点で捉えてみたいと思います。新しくデジタルツールを導入するということは、仕事の仕方を変えなければなりません。組織として何かを変えるということは、変わりたくないという人間の本能と、ある種過去を否定するような側面がありますから必ず抵抗者が出現します。それでも変化を成し遂げられたのは、上手くいかないことを否定するのではなくそれを許容する組織文化と好奇心旺盛で簡単にあきらめることのない川口様のリーダーシップ、そしてリーダーをそばで支えてこられた島田様の存在が大きな要因だったんだろうと思います。
川口様、島田様には昨年のユーザー会でもご発表のご協力を賜りました。本当にありがとうございました。今後もユーザー企業の皆さまから、さまざまなお考えを共有していただくコンテンツとしてこのようなインタビュー形式の記事の作成も増やして参りたいと思います。
ユーザー事例でも触れられているように、問題を解決し、強い状況を作りだしていくためには3年、5年、10年と時間がかかります。残念ながらAIを導入したからといって、その瞬間から急に労働力不足が解決されるわけではありません。3年後、5年後、10年後の労働力不足に対しての打ち手は今始めてその頃にようやく実を結ぶものです。林修先生の「いつやるの?今でしょ!」ではありませんが、始めないと問題は解決しないのは間違いない事実です。皆さまとお話ししていると、問題は分かっているし、やりたいんだけどなかなか時間が取れない、という切実な苦しさに直面します。どんなに苦しくても問題を先送りしている状態は、先の未来が良くならないことを容認していることと同一です。自社のみ、自部署のみ、自分だけでできることは限られています。是非、AutoForm社のような外部の力を上手く利用していただき将来の課題に対する準備を初めていただければと思います。
皆さまともう一度強い日本製造業を創っていくための一部になれるように社員一同精励して参ります。
皆様の安全と健康を心よりお祈り申し上げます。
オートフォームジャパン株式会社
代表取締役社長
鈴木 渉